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高野山 霊宝館(れいほうかん)

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トピックス

毘沙門天立像修復完成

毘沙門天立像と不動明王立像の写真平成14年10月24日無事修復完成し現在展示中です。

平成13年度から15年度の3年の計画で「重要文化財 木造 毘沙門天立像」が(財)美術院国宝修理所で行われました。不動明王立像は現在も修理中です。

不動明王立像 258.8キログラム
毘沙門天立像 269.4キログラム
金剛峯寺


修復

平成12年6月27日付けで新たに本像二躯が重要文化財に指定されたことによりまして、まずは毘沙門天立像を解体修復することとなりました。平成14年2月20日の時点では、毘沙門天像は御首が外され、四方をビニールで囲んだ、いわば仮設の集中管理治療室のようなところに巨体が寝かされていました。恐らく湿度変化による彩色の剥落を防ぐ処置と思われます。そうした中で保存修理が進められていました。

胎内墨書

千手院観音堂外観写真実はこの胎内には沢山の墨書銘があるのが判りまして、その中の代表的なものに「蓮意母尼尊霊」がありました。この蓮意という人物は、もともと不動・毘沙門の両像が安置されていた千手院観音堂を再興したお坊さんであることが高野山の史料から判っていまして、このことから本像の制作時期が蓮意が亡くなったとされる長承元年(1132年)以前であることが理解できます。

制作推定年代

毘沙門天立像の写真さらにまた別の墨書銘の1つには、「春宮大夫藤原公□」とありまして、この春宮大夫とは、古くは天皇にお仕えする臣下のことで、現在だと「東宮侍従」といった方がわかりやすいかも知れません。つまり春宮大夫という位にあった藤原公・・という人物を、鳥羽天皇の春宮大夫であった藤原公実(1053年〜1107年)とすれば、その春宮大夫としての在位期間を調べれば本像の制作年代をさらに絞ることが出来ることになります。うまい具合に『春宮坊官補任』巻89という補任記録の中にその在位期間が記されています。それによりますと、康和5年(1103年)〜嘉承2年(1107年)の数年間が在任期間となり、本像の制作時期をこの間に限定することが可能ということになります。

本像の製作時期である12世紀の初めの高野山は、正暦5年(994年)の大火災によって一山が焼失した後の復興期に相当していまして、根本大塔などは康和5年(1103年)に再建完成されるなど、こうした一連の一大復興事業の一環として千手院観音堂が再興されたことが想像されます。

胎内仏発見

像高269.4センチメートルの大きな本像の胎内から、総高44.4センチメートルという比較的小柄な毘沙門天像が発見されました。

本像は、白檀材と思われる堅木を用いて製作されている珍しいものです。本体像の製作時期が康和5年(1103年)から嘉永2年(1107年)の間に造立された可能性がありますので、本胎内納入仏は、それ以前か、その当時に製作されて納入されたものと考えられます。 平安時代末期の11世紀末から12世紀初頭を飾る胎内納入仏の古例として貴重であること、さらに、胎内納入仏として発見された毘沙門天像の最古の例とみられる大変珍しいものであることなど、重要文化財指定が考慮される優品です。

小柄な毘沙門天像の写真

発見経緯と状況

財団法人美術院国宝修理所(京都市)において、本体である「毘沙門天立像」の保存修理中、御首をはずし、胴内を目視確認したおり発見されたものです。

納入されていた檀像は、両肩の矧(は)ぎ付け接合部が膠(にかわ)の退化で脱落した状態で発見され、また、右手手先、および左手持物の戟部棒の下部が折れて欠失していました。この欠失部の2センチメートルにも満たない右手手先に関しましては、後に判明したことですが、当館に収蔵品として別に保管されていました。

本像は昭和四十八年に台座修理が施されており、その際、本体胎内から落出したと思われる右手手先片がありました。その部位と胎内仏とが上手く合うのではないかというので、急ぎ京都へ赴き、実際に合わせてみますとこれがぴったりと一致しました。つまり本躰台座を修復する際に、どこからか胎内仏の手先だけが飛び出していたのでした。しかしよくまぁ、そのおり出てきた手先片を収蔵品として登録してくれていたものと感心しました。収蔵品として登録していなければ、おそらく気が付かなかったものと思われます。

さて、そんなことで欠矢部は戟部棒の下部のみとなり、これでほぼ完全な状態であることが判明しました。発見当初の彩色は、経年劣化やカビによってやや退色や変色がみられましたが、造立当初の淡い彩色技法の状態をよく保ち、また、像全体に施されている金銀箔による繊細な載金文様もよく残されていました。

2002年10月24日

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